創世記物語(5)~箱舟を作る日々~

聖書の物語

ノアは言いました。
「人間を見て、本当にがっかりされていますよね。
本当にごめんなさい。
私は、神様を信じているのが馬鹿らしいといわれても、何も気になりませんが、
神様を信じても損だ、とか
悪いことをしても自分さえよければいい、という人がどんどんと増えていて勢いを増しています。」

神様は言いました。
「あの雑草を見なさい。
 ほんの一時、とんでもなく殖え(ふえ)広がるけれども、あっというまに本当の穀物たちが畑を覆うだろう?
 彼らも、ほんの一時、彼らは世の中をすべて手に入れたように思うかもしれないが、最後の日が来て、
 本物の穀物にとってかわられる日が来る。
 見なさい、
 自分の好きなものを妻にめとり、
 永遠の愛を誓い合った人たちの末路を。
 今、彼らの愛は冷たくなり、
 虚しさが押し寄せている。
 彼らが栄えるのは、長くて10年ではないか。」

そうして、心熱くなった神様がついに、心の中の秘密を打ち明けました。

「長い長い年月が過ぎて
 私は人間を創ったことを今、とても後悔している。
 捨てたいけれども、
 時に、苦しい時だけちらりと私を呼び、
 また何事もなかったかのように過ぎ去っていく。
 もう、私は騙されない。
 私は一度、水ですべての悪を洗い流してしまいたい。
 そうして、あなたを通してもう一度、再出発してみたい」

と打ち明けました。
ノアが言いました。

「もし、皆が、心をひるがえすのなら、その時は神様、考えを変えてくださいますか?」

神様はおっしゃいました。

「私だって、何がうれしくてこの大切な地球と愛する人間を滅ぼさなければならないのか?
 心をひるがえして正しく生きてくれるのなら、いつだって裁きを行わない。
 この1600年、本当に限界だ!
 だけど、ノア、あなただけは助けてあげたいと思った。
 だから、山の上に船を作りなさい。
 洪水が起こったとき、逃げる場所がないから。」

そこでノアは言いました。

「わかりました。
 それなら、皆にも、神様のことを伝えて、同じく箱舟を作って備えようと、言いますね!
 人間の心には良心があります。
 最後に1ミリだけでも良心が残っているのなら、どうか、一緒に箱舟に乗ってくれと訴えてみます。」

こうしてノアは、山の上で箱舟を作り始めました。
それと同時に、今まで以上にはっきりと
「神様を信じよう!」
「もっと正しい生き方を!」
と叫び伝え始めました。

ノアの妻と、3人のこどもたちもノアの真剣な話に耳を傾けているうち、
心があつくなり、確かに神様を信じられるようになりました。
一緒に、町へでて洪水が起こることを伝え、
山で木を切りだし、船を仕上げていきます。

箱舟の大きさは、今の大きさに直すと、
幅45メートル、長さ125メートル、高さ13.5メートルです。
3階建ての大きなビルのような船です。

来る日も来る日も神様と相談し、神様に確認せずに作られた部分はないというぐらいでした。
そうでないのならなぜこの山の上にこんな大きなものを作れるでしょうか?
人間の考えではできないことです!

強く、真実に、深く、あきらめずに、
ノアはひたすら人々に叫び続けました。

世界は、いつも私たち人間の小さな考えの通りになることなど一つもありません。
どうか目を覚ましてください。
信じられないようなことが起こります。
いくら高い堤防を築いても何ともならない、箱舟に乗るしかないような異常気象が迫ってきます。
どうか私の話を聞いてください。

足が棒になり、
声も枯れ、のどから血がでるほど叫びました。

けれどもノアとその家族以外に耳を貸す人は一人もいませんでした。

ノアが歩いていると、聞こえるように馬鹿にする言葉を浴びせたり、
時には石を投げたりして意地悪をする始末です。
お前の信じている神様など、どんなものか!と神様の悪口まで言い出す始末です。

それでもノアは、ひたすら叫びました。
私が作っている箱舟が何の意味もなくなったと笑える日が来てほしい、
それは人間が今行っている悪い行いをやめる日だ、

いつ終わるともわからない箱舟づくりの日は10年に及びました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました