アブラハムの物語(5)

聖書の人物

ロトとの別れ

エジプトを出発したアブラムとサラ、甥のロトは、多くの財産を持っていました。
牛も羊も多かったし、それらを管理する人々も多く従っていました。

余りに多すぎる羊や牛の群れが一か所に集まって牧草を食べるには、不都合が多くなりました。
ですから、アブラハムとロトに従っている人々の間で争いがおこりました。

頻繁に起こる争いにアブラハムは心を悩ませて言いました。
それで、ロトに言いました。

こんなに争うぐらいなら、いっそ別に住みましょう。
土地はこんなにも広いのに、わざわざ狭い場所に一緒にいることもありません。
あなたも十分な大人なのですから。

ここから先、右と左に分かれ、違う方向へ進みましょう。
あなたが右へ行くのなら私は左に、
あなたが左へ行くのなら私は右に行きましょう。

ロトも度重なる従者たちの争いにつかれていました。
一緒にいたい、とここまでついてきたけれど、別れて独立していくしかないことは誰が見ても明らかでした。

あたりを見渡すと、片方は低地でしたが、建物は多くたっていて、都会でした。
片方は、砂漠に向かっていくような、寂しい場所のように感じました。

それで、ロトは言いました。
どうせ暮らしていくのなら、低地がいいです。
栄えているところを私にください。

アブラハムも思いました。
私の弟の忘れ形見だ。子供のいない私にとって子供のようなものだから、暮らしやすくいい土地がいいだろう。

快くはなしはまとまり、別れの日になりました。

何かあればいつだって私を頼ってきなさい。
あなたの父はいないのだから、私が父の代わりだと思っていればいいのだ。

あつい抱擁を交わして静かに別れを告げました。

ソドムの地

食べ物にハエが多くたかってくるように、ソドムという豊かな土地を奪い取ろうとさまざまな悪がはびこっていました。

表面は豊かでも、人々の心の中は貧しかったのです。互いに分け与えることをせず、奪い合いました。

あるとき、5人の王が結託(けったく)してソドムを攻めてきました。シゲムというところの谷を通るとき、ソドムとゴモラの王は穴に落ちました。

攻めてきた人々は、王も民も関係なくすべてのものを奪い取っていきました。財産の多かったロトも、例外ではありませんでした。ロトの財産もすべて奪われ、ロト自身も奴隷としてとらえられ、あっという間に去っていったのです。

アブラハムの援軍

アブラハムが祭壇を築いて天幕を張っていると、一人の人がものすごい形相でやってきました。
みれば、アブラハムが同盟を結んでいる人でした。
自分たちだけではなく、ソドムにいる甥ロトも連れ去られたと伝えました。

起こったことの一部始終をきいたアブラハムは妻に言いました。
この人をよろしく頼む。
食べ物を食べて、けがをしているから介抱してやってくれ。

あっという間にアブラハムとその従者300人が馬にのって出ていきました。
普段から訓練している人々でした。

こうしてアブラハムはロトがとらえられている場所を探し、追いかけていきました。

夜、油断している彼らを攻めていきました。
1つの方向からだけではなく、いくつかに分かれて逃げ場がないようにして攻めていこう。

静かに近寄ったあと、アブラハムの決めておいた相図とともに一斉に攻め込みました。
町を1つ、2つこえて追いかけていきました。

こうして、奪われたすべてのものを奪い返しました。

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