アブラハムの物語(4)

聖書の人物

美しき妹

「覆いをとって顔を見せよ」

エジプトの手続きをするためにすべての人の顔を見せるようになりました。
サライが多いを取ると、担当役人はビックリしました。

「あんなに美しい人を初めて見た」

すらっと伸びた手足に、気品のあふれる凛とした姿。
うわさはすぐにエジプト中に聞こえました。

若くて美しい、未婚の女が兄とともに来た、とのうわさは王の耳にも届きました。

誰もが彼女を王にあわせたがりました。
王様の高いお眼鏡にかなう、最高の女性です。
エジプトの高官たちは口々に言いました。

遠くから彼女を見た王は大変気に入りましたが、外国から来たサライを王妃にするには一度王宮に召し抱えられなければなりません。
こうして、サライは王妃候補として、王宮に入るようになりました。

妃への道

互いに生きるためには偽りも仕方がない。

結局、私とサライは一生離れ離れになってしまうかもしれない。
しかし、彼女を奪わないでくれというのなら、きっとその場で私は殺されただろう、
アブラムはそう心に言い聞かせましたが、とても不安な気持ちになりました。

サライは宮殿で少しの間留め置かれるようになりました。
当時エジプトの王は神のようにあがめられていましたから、王妃として王の前に出る準備が1日や2日で終わるはずはありませんでした。
月の満ち欠けを眺めながら、昼も夜も、着飾るための服や宝石、香料が次々と目の前に運ばれてきます

王妃として彼女が選ばれようとしているということは誰がみても明らかでした。

気を確かに持たなければ。
務めて気丈にふるまう彼女の姿がより一層、エジプトの人々には気高く美しく見えました。
月が満ちるように、彼女の美しさもますます磨かれ満ちております。

王は、その言葉を聞いて、満足げにうなずきました。
彼女の兄は私の兄だ。
王はそういい、彼に羊やろば、男女の奴隷を与えました。

疫病

人の道に外れることをすれば、天の神が人間を捨て置かない。

エジプトの王は、唯一絶対の神を信じてはいませんでしたが、夢やお告げを気にする人でした。
天の怒りを買って、多くの王たちが病に倒れ、そのたびに国が混乱してきたことを知っていました。

医学も科学も今より発達していない時代、何かの伝染病や悪いことがおこると、人々は自分たちの行いを振り返り、天の怒りを鎮めなければならぬと思ってきたのです。

エジプトの王パロ王がサライを王妃として正式に召し抱える日が間近に迫ったある日、一人の奴隷がばたん、と倒れて息を引き取りました。
若くて健康そうに見えたのに、なぜ?少しびっくりしましたが、彼を丁重に土に埋めて葬りました。

ところが、熱を出して倒れる人が日に日に多くなります。

ついに、パロの家族まで、熱を出して倒れてしまう始末です。

天の怒りを買っている何かがあるんだ!

エジプトの宮殿は大騒ぎになりました。

こうして占い師を呼んで調べてみたところ、
王が不貞を働いている、と告げております。

と占い師がいいました。

何を言うか!偽占い師め!
王は腹を立てて、何人もの占い師を呼びましたが、皆同じ結果が出ます。

調べているうち、サライがアブラハムの妻であることがわかったのです。

王との別れ

パロはアブラハムを呼びました。

「お兄さん!私は兄のようにあなたを慕っておりました。
なのに、なぜ私に嘘をついたのですか?」

そこでアブラハムは答えました。

「あなたが誠実で偉大な王だということを知っています。
あなたはサライが私の妻だと知ったのなら、おっしゃる通り、私から彼女を奪うことなどしないでしょう。
しかし、あなたの周りにいる人々は、私を殺し、彼女を奪って自分の娘だと偽り
あなたに献上したに違いありません」

そこでパロは言いました。

「私は天の前でも民の前でも、清く正しい王でなければならないのです。
多くの民の命を天が私にゆだねています。
たとえ知らなかったとしても、私が天の前に罪を犯すところでした。
私が責任をもってあなたを守りますから、どうか、この地をあなたの妻とともに去るようにしてください。」

「あなたに送ったものは、私のお詫びの印であり、
 あなたを兄として慕うしるしです。
 私はいつまでも、あなたの弟です。
 気をつけて、行ってください。
 神があなたを大いなる祝福で満たしてくださるよう、祈っています」

こうして、アブラハムとサライは惜しまれながらエジプトの地を去っていきました。
神様は、パロの家に再び、平和と繁栄を与えるようになさいました。

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