イエス様物語(17) ~バプテスマのヨハネの死~

Bible Study

陰謀

王は自分の弟の妻と一緒に陰謀を働きました。
ヘロデ王はヘロデヤに言いました。
「バプテスマのヨハネが私たちのやった事を暴いて大騒ぎをしている。ひとまず獄に入れてあるが・・
獄から出せとの言葉も多い・・。
あのまま放っておいたのなら、私は彼の言うとおりに罪を認めたことになる。
それならば王としてやっていけない。
お前も不貞の女と言われて民に殺されてしまう。。どうしたらいいか・・」

ヘロデヤ言いました。
「王様、あなたは王ではありませんか。直ちに殺せばいいんじゃないですか。」

ヘロデ王は言いました。
「うーん。そのようにしてはいけない。多くの群れがついているから反乱が起こりかねない。」

それでしばらく考えました。
そして、ポンっと手をうち、言いました。

「そうだ。今度私の誕生日がある。その時、宴をする。。
 恩赦といったこともするから、特別なことができるわけだ・・・
 あなたの娘サロメは踊りがうまかったよなあ・・。
 私の誕生日の日、上手に踊って私を喜ばせた人には、どんなものでもあげようと約束する、その時サロメにどんなものでもあげるということにする。
 だからあなたは、娘サロメに話しておいて、サロメが”バプテスマのヨハネの首を求めるようにして下さい。”と言わせなさい。」

そのような二人の陰謀があることも知らず、宴会の準備は進みました。

王の誕生日になって宴会を開きました。「踊って私を喜ばせる人には何でもしてあげよう。」それでみんな踊りました。
しかし、王は最初からヘロデヤの娘サロメに賞を与えると決めていたのです。
ですから皆の踊りは見ているように見せかけて、実際は全く見ていなかったのです。

すべての人が踊った後に、王は言いました。
「ほかにはもういないのか?」
そこで、静かに手を挙げる少女がいました。ヘロデヤの娘サロメでした。

「それでは、あの少女にもチャンスを与えよう」
そういって、サロメを王の前に立たせ、踊りを踊らせました。

バプテスマのヨハネの首を

王は最初、少し疲れたふりをして、うつむいていましたが、サロメが踊りを踊り始めると、ゆっくりと顔を上げて、じっと見入っていました。そうして、踊りが終わった後、拍手をしました。

王はサロメに言いました。「お前はどうしてそんなに踊りがうまいのか。」

サロメは答えました。「母に教わりながら毎日踊っています。今日は王様の特別な日だというので、たくさん準備してきました。」

王はいいました。「うむ。そうだろう。お前の真心が感じられる踊りだった。約束通り、お前の望むものをなんでもあげよう。何が欲しいのか。」

そこでサロメは言いました。
「母とも相談させてください。私だけの力で踊れたのではありませんから。」と言ってサロメは母ヘロデヤの所へ行きました。

サロメは王が自分の踊りを喜びなんでもくれるといわれるとは知らなかったのです。幼い少女でしたから、とてもびっくりしたのです。

母は小さな声でサロメに話しました。
「私はあなたが幸せであるのなら、何にもいらないわ。だけれどね、何かをもらうというのなら・・お母さんはバプテスマのヨハネの首が欲しいの。」
娘は言いました。「え、首ってなあに?」
母は答えました。「うん。いいものよ。その首というものがあれば、私たちはもっと豊かで良く暮らせるようになるのよ。だから、お母さんの願いはそれだけ。もしあなたが、私の願いを聞いてくれるというのなら、バプテスマのヨハネの首を盆にのせてください、と言ってくれるかしら?」
娘は答えました。「うん、わかったよ、お母さん。私はお母さんがよければそれでいいから。」
そうして、サロメは再び王のところへ戻ってきました。
そうして、まだあどけない少女はたどたどしく言いました。

「王よ、お願い申し上げます。バプテスマのヨハネの首を下さい。」

その小さくか細い声から発せられた言葉に一同水をうったようにしんと静まり返りました。
しかし王は、即座に答えました。

「なに、バプテスマのヨハネの首を、とな?」

サロメはいいました。「はい、そうですよ。早く下さい。」

王は言いました。
「それはだめだ。どうしてそんな事を求めるのか。」

サロメはいいました。「でも、それがあればこの国は平和となるのだ、と聞きました。王様はなんでもくれるといいましたが、なぜダメなのですか?」

王は心の中では笑いながら、その笑いをこらえて誓ったことを後悔するふりをしました。
そうして、「ああ、どうしよう。私は誓った事を後悔する。」といって倒れこみました。

倒れてうつむいたとき、王はほくそ笑みましたが、その笑みがばれないように、う、う、ううう・・・と倒れこんでしばらく床に突っ伏しました。
笑みをこらえるのに時間がかかったのですが、家臣たちは皆、後悔していると信じるのに十分な演技でした。

そうして、絞り出すように言いました。
「私はもう知らない。あなたがたが何とかしろ。」

そこで、王の家来たちがバプテスマのヨハネの所に行きました。

盆の上

王の家来たちの中でも、バプテスマのヨハネを快く思っていない人たちがいました。
そうして彼らが部下たちに入れ知恵を授け、美しい盆をもって部下数人を牢屋へやりました。

彼らは獄の前についたとき、言いました。
「ヨハネ先生、今日は王の誕生日です。それであなたを釈放する事にしました。王があなたを連れてきて、今までのことを詫びたいといっています。」

ヨハネは答えました。
「そうか。こんな神様の人の事も知らないで私を閉じ込めるなんて、と思っていたが、悔い改める気になったのか。間違いは悔い改めなければならない。」

家来は答えました。
「先生が行く前に王が心変わりせぬように、また私たちが先生を連れて無事に道中を行けるように、先生、祈って下さい。」

身なりを整えたヨハネがいいました。
「そうだな。そうしようか。」と言って静かに首を垂れて祈りを始めました。
ヨハネが祈っているとき、一振りで首を切りおとし、盆の上にのせました。
そうして、すぐに王宮に戻り、その首を子どもの所に持っていきました。
王の誓ったとおりになったのです。

人々は、ヘロデ王の間違った誓いによってバプテスマのヨハネを殺したのだといいました。
彼の陰謀は成功し、王としての威厳は保てたかのように見えました。

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