アブラハムの物語(3)

聖書の人物

カナンの地

カナンの地についたアブラハムはベテルと呼ばれる山へ登っていき、
天幕をたてて祭壇を築きました。

10代前の先祖ノアが捧げていたような祭壇。

アブラム自体は、幼い時にはメソポタミア神話の神々を拝んでいましたが、今、唯一絶対の神を信じています。
失われた自分の子が、生きて戻ってきたような不思議な感覚に包まれながら、神様は目を細めてアブラハムの姿に見入っていました。

私の人間に対する思いも、彼の人生のように、古いものをすてて新しくして、
彼とともに今再び始める日なんだ、
神様は心の中でそう叫びました。

そうしてアブラハムに言いました。

この地は、私があなたの先祖の時から用意しておいた格別な地だ。
今、この地の主人はまさに、あなただ。
私とともに生きていく人生、あなたにいつも共にする。

そういってカナンの暮らしが始まりました。

飢饉

長い年月先祖たちがあけていた土地を少しずつ切り開いていました。
おまけに、カナンの地は、時に厳しい飢饉が襲ってきましたから、
蓄えていた食料は、底を尽きてくるようになりました。

多くの使用人と家畜たちを養うには、難しいほどになってきたので、
多くの人達がエジプトで食料を買い求めるようになっていました。

作物は種を植えても実が実るまでに時間がかかる。

生きるためにはやむを得ない・・

そこでアブラハムはこの難を逃れる為、エジプトへ行きました。
持っている金銀と食料を交換して、しばらくの間エジプトへいたらいいだろう・・。

こうしてエジプトへと旅立ちました。

妻から妹へ、夫から兄へ

アブラムと異母兄弟として育ったサライは、とても美しい女性でした。
エジプトへ行く道すがら、人々に出会うたびに、人々は彼女の美しさに驚嘆しました。

エジプトはどんなところか、近づいていくにつれ、ピラミッドが遠くに見えてきます。

あれが王の墓だって。とんでもない権力の持ち主なのだね、
アブラハムの従者たちが口々にうわさしました。

きけば、多くの美しい女性が王に召し抱えられているのだといいます。

しかし、アブラムは思いました。
私が愛しているから、ということを除いて考えたとしても、やはりサライのような美しい女性はいるだろうか?
異国から入ってきて珍しいことも手伝えば、当然多くの男たちが彼女を奪いたいと考えるだろう。

見知らぬ土地で戦うのなら、私は常に命の危険にさらされることになる。
ならば、結局サライも、ロトも、私と共にいる多くの人々の命も、守れないのではないか?

それでサライに言いました。

私たちは互いに、妻です、夫ですと言わず、
妹です、兄です、と言おう。

私が夫だといったのなら、きっと私を殺すだろう。
殺して、身寄りのないあなたを妻として迎え、あなたはエジプトの地を出られないまま終わることになるだろう。
事実、私たちは、母は違っても、兄と妹なのだから。

静かに目を合わせて、互いにうなずいた後、多くの寄留者たちのように、彼らも入国許可をもらい、エジプトの地へと入ってきました。

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