創世記物語3(沈黙の1600年)

聖書の物語

神様は人間と話すことをしなくなりました。

それでも神様が作った自動装置のような地球は変わることなく法則通りに静かに動き続けていました。

人間たちも、
生まれて成長し、子を産んで、
年老いて死に、
また新しい人が生まれて、
成長し、
子を産んで、
年老いて死に、
時間だけが流れていきました。

空の鳥も
海の魚も
宇宙の星たちも
変わらず美しいままでした。

しかし人間だけは、どんどんと意地悪になっていきました。

人間の真ん中にある愛は、
神様の愛とつながらなくなったので
方向を失い
エネルギーの源を失って
どんどんと冷たくなっていきました。
そうして、人間の皮をかぶった
獰猛(どうもう)な獣のような人々が勢いを増していきました。

もう大人だから
自分を縛るものは何もない、といって
神様が作った法則に逆らうことを選んで
まるで糸が切れた凧のように
あてどもなく
飛んでいって
帰る場所もなく
見る人もおらず
刺激が欲しいと
酒を飲んで酔っ払い
絡まった糸が何かに引っかかり
自分も
相手も
傷つけて
もはや
神様がくださった
知恵と
聡明と
愛と
慈しみは
影を潜めていきました

地球の万物たちも
人間の存在を嫌がりました

略奪や
強姦がおこり
いつも人々は争い
時に罪のない人々の血が流されて

彼らの血が神様に大きな叫びになって
昼も夜もなく
訴え続けました

その声はついに
沈黙している神様のところへ
届くようになりました

「人間なんて創らなければ良かった」

ぽつり、と神様が言いました。

もう、人間なんて滅ぼしてしまおう、

心に決めた神様が、最後に人間たちをじっと眺めました。

もしかして、私を呼んでくれる人がいないのかと。
諦めと期待の入り混じった心で
うなだれていた顔を少し上げて、
頬杖をついて、
涙で潤んだ目を静かにあけて
じっと見つめました

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