イエス様の時代の為政者たち

聖書の知識

為政者(いせいしゃ)ってわかりますか? 政治上の責任者 という意味です。

初代カエサル

イエス様がお生まれになる少し前から、イエス様が活躍した時代はローマ帝国が隆盛を極めた時代でした。

”カエサルのものはカエサルに”
とは聖書から出た慣用句で、転じて、物事は本来あるべきところに戻すべきである、の意で用いられる有名な言葉があります。

カエサルといえば、”ガイウス・ユリウス・カエサル”、英語名 ”ジュリアス・シーザー”が有名です。
彼はイエス様が来られる前に君臨したローマの王でした。
弱体化していたローマを再び「強者」として復活させ、後の帝政ローマの礎を築いたのです。

ユリウス暦という暦、これ、今の太陽暦なんです。これを作った人でもあります。
太陽暦というのは1年365日となる暦で、それまでの人々は(日本もそうですが)太陰暦と呼ばれる、月の満ち欠けをもとにした暦でした。

独裁者となって君臨しようとしましたが、最後に暗殺され、暗殺されたときの言葉、
「ブルータス、お前もか」の名言でも知られてもいます。

デナリ銀貨の主、2代目皇帝カエサル

税に納める貨幣を見せなさい」。彼らはデナリ一つを持ってきた。
そこでイエスは言われた、「これは、だれの肖像、だれの記号か」。
彼らは「カイザルのです」と答えた。するとイエスは言われた、「それでは、カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。

マタイによる福音書22章19節~21節

ここでイエス様のところに持ってきたデナリ銀貨は初代カエサルのものではありません。
ローマの2代目皇帝、「ティベリウス・ユリウス・カエサル」のもので別名ティベリウス銀貨と呼ばれています。

初代カエサル王の暗殺後、ローマ帝国の初代皇帝にアウグストゥス王が即位し、その後の王ということになります。

さて、このカエサルのものはカエサルに、という有名なシーンは、
イエス様を言葉の罠にかけようとして、税金を収めるべきか、神に収めるべきですか、と聞いてきたところに返答した場面です。

口語訳聖書ではカエサルを「カイザル」と表現しています。
当時のイスラエルは、ローマ帝国の属国でした。
民衆は、「ローマ帝国から独立したい!」と考えていました。
それで、イエス様に反対する人たちが、
「ローマに税金を払うべきか?」という意地の悪い質問をしてきたのです。

治めるべきだといえば、民の反感を買うし、神にだけ治めればいいといえば、ローマの属国として目を付けられるような状況だったのです。
いずれの答えも陥れるために用意した質問だったのです。

ヘロデ王

ローマの属国となったイスラエルを直接的に統治していたのは「ヘロデ王」でした。
初代カエサルの死後、初代ローマ皇帝となったアウグストゥス王が信頼を寄せる部下アントニウスに取り入って、元老院からユダヤ王(イスラエルの王)の地位を与えられるように仕向けたのち、
2代目皇帝ティベリウス・カエサルにも取り入ることに成功し、イスラエルの王としてその地位を確固たるものとしました。
イエス様が生まれた当時の王です。

ソロモンの時にエルサレムに建てられた聖殿は様々な時代の侵略により荒れては復興し、を繰り返していましたが、ヘロデ王の時代にもヘロデ王が大改築して壮大な神殿に造り替えました。これは、ユダヤ人の支持を得ようとして行ったものでしたが、ユダヤの人々にはかえって反発されたようです。

イエス様が生まれたときに、2歳以下の男の子を皆殺しにしたり、バプテスマのヨハネを殺させたなどでも有名な王です。
イエス様はヘロデ王のことを「きつね」と呼びました。

苦闘の果てに

メシアを待ち望む人々の背景には、このようなローマとヘロデ王の圧政から逃れたいという切なる願いがあったようです。
イエス様を裏切った12使徒の中の一人、イスカリオテのユダもその一人で、イエス様がメシアなら軍隊を率いてローマを倒してくれると思っていたのに、病人を癒し、祈って一人一人を帰り見るばかりだったからだ、という説を唱える人もいます。

ギリシア神話に代表されるように、ローマは多神教の国でした。今の日本のように、さまざまな神を拝む国だったと考えていいでしょう。
このような国に、小さな小さな属国であったイスラエルから、ローマの市民権を持っていた使徒パウロを中心にキリスト教を伝播していきました。その後、皇帝ネロによって多くの迫害と苦しみに遭いながら、 400年の長い迫害の果てに、世界で最初にキリスト教が国教となりました。

2000年を経たこの時代、当時のような国という領土はありませんが、キリスト教の第一国として君臨する国となっています。

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